2004九州 〜ようこそ鉄道のテーマパークへ〜  前編


2004年6月6日(日)

6月に1週間程、会社を休めることになり、3月に開業した九州新幹線に乗りに行くことにした。そして九州新幹線に付随して登場した、「九州横断特急」、「はやての風」、リニューアルされた「いさぶろう・しんぺい」、「なのはなDX」なんかにも乗ってこようという魂胆だ。さて、どうせ九州に行くならやっぱり滅多に乗ることのない寝台特急で行きたいものだ。さくら、はやぶさ、富士、どれにしようか迷ってみる。それから九州内はやはりフリー切符タイプの乗車券がいいに決まっている。さらに、今回の一番の目的である九州新幹線にも乗れるのがいいな、なんて思って、周遊きっぷを調べてみるとなんと、周遊きっぷの九州ゾーンきっぷは九州新幹線には乗れないとのこと。まじ?豪遊券はすでになくなって久しいし、しからばインターネットを駆使していろいろ調べてみる。しかし、JRからはそんな都合のいい切符はでていないようだ。もう少し調べてみると、ありましたよ。九州新幹線を含むJR九州の全線が乗り降り自由になる「全九州フリーきっぷ」なるものが。ところがこの切符、先ほどもちょっと書いたがJRのみどりの窓口では発売していないのだ。じゃあどこで?旅行代理店 の主催するパッケージツアーのオプションとして売っているのだ。いわゆる、往復の航空券とホテルがついたフリープランタイプのオプションとして存在するのだ。ということで、早速、ツアーパンフレットを何種類か調達する。ツアー条件が九州までの往復航空券と最低1泊のホテル代がパックになっていて35000円前後。ホテルは1泊につき7000円前後の追加料金で延泊が可能。JRのオプションは、北九州とか西九州とかいろいろ範囲があるが、当然、全九州フリーきっぷをチョイス。期間も3日間、4日間、5日間と選択できる。こちらも当然めいっぱいの5日間用を選ぶ。値段は15000円。ということでトータル50000円前後。ツアー会社や、宿泊ホテルのランク、出発日によって価格が多少前後する。ということで、今回はJALSTAGEにしてみた。ちなみに、周遊きっぷで寝台特急を利用すると、九州ゾーン券を含めて、54000円程するわけで、これに別途九州新幹線の値段(新八代−鹿児島中央 自由席 片道4830円)がプラスとなり、さらに、宿泊はなしなのだから、このパッケージツアーの代金がいかにリーズナブルかがお分かりいただけると思う。ということ で、この時点で九州までの寝台特急を諦めることにした。今や、飛行機の方が時間が早いだけでなく、安くもあるわけで、私のような鉄道おたくでさえも飛行機に乗ってしまうわけだ。JRは国鉄時代からの運賃体系をかたくなに守って大した割引料金もなく、飛行機では当たり前になったマイレージもないのでは顧客離れを起こすのは当然。今の世の中、食うか食われるかの時代、航空会社も必死だ。JRもドラスティックな割引運賃制度を考えるときがきているのではないかと思う。

1783便大分行で九州入りします。 元スーパーシートのJクラス
梅雨でも雲の上は青空です。当たり前ですが... まだJAS塗装でした。

そんなわけで、今回、生まれて初めて、九州入りに飛行機を利用することになった。6月6日(日)今日にも梅雨入りと言われる日にまずは大分へ向けて出発した。1000円プラスで乗れる6月1日から新しく出来たというJクラスにアップグレードなんかしてしまう。しかし、羽田は相変わらずの手狭で、ターミナルからはバス接続。この12月には新ターミナルができるそうで、こんな状況も少しは改善されることを期待する。さて、Jクラスのシートは、まだ正規のものではなく、もとスーパーシートの座席なわけで快適なことこの上ない。シートピッチ、座席幅ともエコノミーとは天と地ほどの差がある。国際線では絶対乗れないのでせめて国内線だけでもこの気分を味わう。しかしたかだか1時間ちょっとの時間に1000円が高いと思うか、安いと思うかは、意見が分かれるところ。ちなみに大分行では機材はA300でJクラスのシートは全18席のうち、6席しか埋まっていなかった。そうそう、JALってA300なんか持ってたっけ?って思ってたら、もとJAS機。塗装もまだJASのまんまであった。
飛行機は確かに早いのだが、空港から市内までのアクセスがなんとも面倒だ。大分の場合、空港が国東半島にあり、別府まではバスで40分、1450円もとられる。驚いたことに、こんな国東半島に高速道路までこしらえてある。なるほど道路公団が批判されるわけだ。しかし高速道路のおかげで、別府、大分へのアクセスは飛躍的に早くなってるわけだから文句ばかりも言ってはいられない。別府北浜でバスを降り、今日はこのあと地獄巡りをする。死んでから行く場所を一足早く下見しておこうというわけだ。定期観光バスが出るまでやや時間があるので時間潰しに目の前にあった別府タワーに上ってみようかと思い立つ。とは言うが、たかが時間潰しに700円とか800円とか払うのは嫌だなって思ってたら入場料は200円。タワー下の今にも壊れそうな券売機で切符を買う。こういうタワーにありがちなエレベーターガールもいず、外が見えるわけでもない、いわゆる普通のエレベーターに一人乗ってあがる。階数には17Fとあるがタワーなので途中階への停車はない。扉が開くと、いきなり、目の前がローカウンターの売店で、中年男性職員にチケットをそこの籠に入れて下さいと言われ、そ の通りにすると、どうぞごゆっくりといわれる。早速、外を眺めようと思うが、この展望台喫茶店を兼ねているようで、展望フロアは昭和40年代にありがちな喫茶店のテーブルと机がところ狭しと並べられており、そのテーブルの合間に望遠鏡がおいてあるといったなんとも奇妙なレイアウトで、ちょっと落ち着きが悪い。先客が2名程そのテーブルに座って、アイスコーヒーを飲んでいるが、日曜の11時ではあるが今にも降り出しそうな曇天では、他に客もない。景色も霞んであまりよく見えないず、そこそこに退散する。ちなみにこの別府タワーは高さが100M。昭和32年と東京タワーより1年早く竣工したそうで、大阪通天閣、名古屋テレビ塔に告ぐ古さだそうだ。

別府タワー
別府タワー エレベーター内の案内
展望台の様子。喫茶店と展望台のあいのこみたいな感じで
ちょっと落ち着かないです。
別府タワーから鉄輪温泉方面の眺め 温泉の湯気が方々に見えています。

さてそろそろ地獄巡りの定期観光バスの発車時間になって北浜バスセンターへ向かう。バスセンターと言ってもホテルのロビーを間借りしているため、バスターミナルという雰囲気ではない。地獄へは高校の時の修学旅行以来、実に17年ぶりの訪問である。そしてこの亀の井バスは日本初のバスガールを採用したバス会社であるとのことで、20年前まではバスガールだったバスガイドは、当時の七五調で案内をする。20分程バスに揺られて鉄輪(かんなわ)温泉の地獄へ到着。海地獄、山地獄、坊主地獄、釜戸地獄、鬼地獄、金竜地獄、白池地獄、血の池地獄、竜巻地獄を見学する。17年前とはだいぶ様子も変わっている感じがしたが、実際に変わったのか、はたまた記憶が薄れているのか・・・。
3時間近くの観光が終わり、別府駅に戻ってくる。

地獄
海地獄 鬼石坊主地獄
山地獄 かまど地獄 その1
かまど地獄 その2 かまど地獄 その3
かまど地獄 二丁目 かまど地獄 その4
鬼山地獄 白池地獄
金龍地獄 鉄輪温泉
血の池地獄 竜巻地獄 間欠泉です。

今度は、別府市内にあるラクテンチケーブルへと向かうべく、駅前からバスに乗る。ラクテンチとは昭和初期からある遊園地でこの3月にリニューアルオープンされた。その輸送用のケーブルカーなのだが、ちゃんと鉄道事業法に基づく鉄道で、完乗を目指すのなら乗らなければなるまい。運賃は入場料が込みになった1000円のとくとくBクーポンが一番最適。4枚つづりの切符で、ケーブルカーの往復で2枚。入園券として2枚が必要となる。ちなみにケーブルカーだけの往復はできず、ケーブルカーに乗るイコール入場ということなので最低1000円はかかる。車両はリニューアルに合わせて塗り替えられたが、車両自体は古めのものが使用されている。直線的にわずか3分で頂上のラクテンチ上までを結ぶ。雨模様にもかかわらず、日曜ということで、少ないながらもお客が入っている。一人で遊園地をブラついても面白いこともないのだが、この遊園地には別府らしくパノラマ温泉なる設備がある。せっかく別府まできて、こんな遊園地くんだりまで来たのだから入っていくことにする。このパノラマ温泉にもチケットが1枚いるのだが、入園券とケーブルカーで4枚使ってしまうので、新たに1 枚300円で買い求める。脱衣場は100円のコインロッカーになっていてさらに100円が追加で必要。誰もいないから、鍵をしめなくてもよさそうだったが、こんなとこで100円けちって盗難にでもあっても馬鹿馬鹿しいので100円を供出する。お風呂は2階建てで1Fがやや狭いながらも露天風呂になっていて、2Fが半円形ガラス張りのパノラマ風呂である。温泉の湧出量はアメリカのイエローストーンについで世界第二位を誇るという別府の湯は、湧き出るお湯を各温泉旅館が使い、さらに各家庭にまで引いても、実にその90%がそのまま別府湾に注がれてしまうという。なんとももったいないことである。そのため当然、ここのパノラマ温泉も今はやりの言い方で言うかけ流し。循環式や還流式などケチなことはかえってお金がかかるのでやっていません。晴れていれば、別府市内が一望できるという触れ込みだが、今日も雨模様ながら比較的よく見通せる。人も少なくてというか自分以外は誰もいない貸切状態でのんびりはいってくる。ラクテンチケーブルに乗りにきたときは是非、この温泉に入ることをお勧めする。
さて、そろそろ戻るかということで、再びケーブルカーを下る。しかしバスが絶妙なタイミングで接続しておらず、次のバスまで40分近くもある。仕方ない歩くか。帰りは下り坂だし、流川通りをまっすぐ行くだけなのだが、雨脚が強まりちょっと難儀をしながらてくてく歩いていく。約20分程で別府駅に着く。

ワンダーラクテンチ
ワンダーラクテンチ 正門です。 1号機 スター号です。
リニューアルオープンの際に塗装は新しくなりましたが、
車両自体は以前のままです。
ちょっとバウっぽいと思って写真撮りました。
人数数えてているから話しかけないでって
カウンター持てば済むと思うんですけど...
2号機のライト号です。

別府駅からは今回、やっと初めて鉄道にて大分へ。全九州フリーきっぷは明日からなので、大分までは切符を買う。やってきた列車は815系。水戸岡氏デザインの通勤・近郊型電車で、いわゆる普通の電車とは一味違った車内デザインだが私、個人としては落ち着いた空間とは言えず、あまり好きではない。
今夜は大分泊まりということで、駅から徒歩10分の大分東洋ホテルに宿泊。実は申し込んだとき、このホテルのことをよく知らずに、駅から近いということと、追加料金なしということで安直に決めたのだが、実は日航ホテル系列。JALツアーズで申し込んでいるので、格安に宿泊できるのだ。ロビーといい、客室といい1泊15000円は下らなさそうな設備で、かなり得した気分。おまけにウェルカムドリンクと朝食もついてくる。たかが朝食なんて馬鹿にしたものではない。朝の和定食は最上階のレストランで1750円もするのだ。ということで今晩は明日からの宿無し鉄に備えて、早めに寝る事にした。

815系大分行 別府駅 大分駅

2004年6月7日(月)

さて、明けて7日の月曜日、いよいよ今日から本格的な鉄を始める。梅雨入りしていて天気は期待していなかったが、起きてホテルの部屋のカーテンをサーッと開けると昨日とは打って変わって気持ちいいくらいの晴天が広がっている。まずは大分8時13分発の九州横断特急1号から始める。なんか仰々しいネーミングだが、いわゆる、旧「あそ」と「くまがわ」が一緒になった特急で使用車両も2両編成の185系気動車だ。残念なことにやってきた車両はまだ九州横断特急仕様の塗装になっておらず、あそ・ゆふ仕様のままである。別府始発の列車だが、大分でも十分窓側に座れるほどにすいている。九州横断特急の通る豊肥本線は有名すぎていまさらここで言うこともないのだが、阿蘇の外輪山を越えて立野で3段スイッチバックが存在する。この列車、特急のくせにワンマン扱いなのだが、実は女性の客室乗務員が乗務している。検札もするので、車掌では?と思うのだが、車掌ではなく、あくまでも客室乗務員なのである。JR九州ではどうもドア扱い等、運転に直接関わることをする人が車掌。検札や車内放送、車内販売(ワゴンサービス)などをお客の世話係をするのが、客室乗務員と言うらし い。
しかしいくら風光明媚な車窓が続き、スイッチバックの変化があるといっても朝8時13分に乗って人吉には12時55分と所要時間は約5時間。いい加減飽きてくる。熊本で乗客が入れ替わるのは当然で、乗り通しているのは、俺一人くらいなものだ。ずっと座っているだけでもお腹はすいてくるもので、八代から積み込んだ、鮎屋三代という駅弁を購入。あとで知ったのだがJR九州の特急列車の6月号の車内誌にも紹介されており、九州新幹線開業に伴い、八代の老舗鮎料理店「より藤」が新たにこしらえたもの。老舗の味だけあって、鮎の出汁で炊き込んだご飯の上に一匹付けでのっている鮎の甘露煮は絶品。頭から食べても、骨が口に当たることは全くない。最後は球磨川のたゆとう流れを眺めつつ人吉に到着した。

185系 九州横断特急1号
残念ながら塗装はあそ・ゆふのままでした。
方向幕です。
鮎屋三代 中は炊き込みご飯の上に鮎の甘露煮が丸一匹入っています。

人吉では5分の乗り換えで肥薩線の観光列車「いさぶろう」に乗る。「いさぶろう」はキハ40を観光列車用に改造した列車である。6月の平日だというのになぜか指定席は満員とのアナウンス。なんとかフリースペースに空き席を見つけて腰掛けた。何事かと思ったら、団体のツアー客が乗り合わせている。おいおいたった1両編成で30人からの団体で指定全席が埋められてしまうっていうのは如何なものだろうか。この日は臨時のいさぶろう101号の運転が設定されていないのだから団体が入った日はこの臨時を運転して、この列車に乗ってもらうなどの対策をとって欲しいものだ。しかしとなりに座った近ツリの添乗員のパンフを盗み見ると列車で巡る九州3日間とある。そして、乗車した路線図を見ると、九州新幹線はもちろん、この肥薩線、そして筑豊本線などかなり渋い路線にも乗っているようだ。客層は、鉄ちゃんではなくいわゆる普通のツアーに参加するようなおばちゃんが主体。ただし、大阪発のツアーらしく、大阪弁でまくしたてているかなりパワーのありそうなおばちゃん達だ。日ごろこういうツアーでの移動はバスが主なので列車での旅というのは新鮮らしい。値段は多少高くつく かもしれないが、こういうツアーはこれからローカル線活性化につながるかもしれないなんて思った。
さて列車は人吉を出るといきなりループ線に入っていき、大畑(おこば)へと向かう。観光列車ということで、それぞれのスポットで徐行、停車、そして駅での停車時間も十分に取れている。スイッチバックをしてループ線の途中の大畑に到着。スイッチバックとループ線の両方がある駅は日本ではここ大畑だけだ。再び出発、ループ線を登ってゆき、さっき通ってきた線路の上で、しばし停車。普段はループ線といいながら、一瞬で過ぎてしまったり、なかなかループが実感できにくいものだが、こうして停車して下にクロスするレールを見られると、本当にループ線を実感できる

いさぶろう 人吉駅 大畑に停車中のいさぶいろう
車内の様子 基本はミニテーブル付きのボックスシートです。 車内にあるレトロ風の路線案内
いさぶろう・しんぺいのロゴ 大畑の駅名標と展望席
大畑駅 大畑から矢岳へ向かう眺めです。
ループ線の標識 下に先ほど通った線路が見えます。ポイントの奥が大畑駅です。

しばらく林の中をすすみ矢岳に到着。ここでも停車時間があり、駅に隣接されたSL保存館を見学する。昔はこの急勾配の難所をSLで越えていたそうで、何度も立ち往生したそうである。矢岳を出るとすぐに矢岳第一トンネルに入る。長さは2096M。今ある長大トンネルに比べれば、大した長さではないと思うが、開通当時の明治末期では、数多くの犠牲者を出した大変な難工事の末に開通したトンネルで、当時鉄道の最高責任者であった逓信大臣の山形伊三郎が、人吉方に「天険若夷」、鉄道院総裁、後藤新平男爵が吉松方に「引重致遠」という石額が入り口にかかっている。これは両方あわせて、「テンケンイノゴトシ、オモキヲヒキイテトオキニチス」と読み「天下の難所を平地のようにしたお陰で、多くの人間や貨物などの重いものをどんどん遠くに運搬することが出来る。」という意味であるらしい。ということでもうおわかりかと思うが、この両名の名前から列車名の「いさぶろう」「しんぺい」が付けられているのである。列車はトンネルを抜けると、霧島そして遠く桜島まで遠望できる絶景が広がり、再びスイッチバックを通り、真幸(まさき)に到着。真の幸という大変縁起のいい駅名 ということで、この駅の入場券が結婚式の引出物に添えられることもよくあるという。ちなみに真幸は無人駅で入場券は人吉駅に売っているそうだ。この真幸駅は熊本県でも鹿児島県でもなく宮崎県に位置している。この真幸を後にして列車は1時間22分で吉松に到着した。

矢岳駅 矢岳駅に停車中のいさぶろう
矢岳駅にはSL展示館が併設されています。 ちょっとボケてしまいました。
分かりにくいですが「引重致遠」の石枠です。 矢岳トンネルを抜けるとご覧のようなパノラマが広がります。
真幸駅 乗客が幸せの鐘を鳴らします。皆、幸せになりたいんですね。
幸せになる道には二つある1つ目は願い事うまく叶うこと。
もう一つは願いなんか捨ててしまうこと。幸せになりたいね。
吉松に到着した「いさぶろう」。ここで折り返し「しんぺい」になります。

吉松からは今回新設された肥薩線特急の「はやとの風」。SLばりの真っ黒な車体はキハ40、キハ47の改造車でキハ140、キハ147。ってちょっと待てよ。これって、普通列車用じゃないか。デッキもないし、しかもキハ47に至っては、近郊用の両開きドアじゃないか。しかも窓も開く。いくら改造してるとはいえ、これで特急なの?特急型車両が格下げになって急行、普通になるのはよくあるが、普通型が特急になるっていうのは聞いたことがない。私の記憶では、秋田新幹線の工事中に1年間の限定で北上線経由で走ったキハ110系使用の特急秋田リレー号くらいだが、これだって改造ではなく、300番代として新造された車両だった。しかし、車内に入ると見事に改造が施されており、床はフローリング、座席はもちろんのこと、灯具もすべて取替えらており、普通列車時代のおもかげはほとんどない。列車は隼人から日豊本線に合流して錦江湾沿いに桜島を眺めながら鹿児島中央へと向かう。

吉松駅 こういう素朴な感じの駅名表示珍しくなったような気がします。
吉松駅の近くにC55が展示してあります。
ちょうどメンテナンスしているときでした。
こうしていつまでもいい状態でいて欲しいですね。
はやとの風 吉松駅
展望席部分の様子 こちらが展望席です。
車内の様子 背もたれの一部は木のむき出しですが、
座り心地は悪くはありませんでした。
はやとの風車内のレトロ調路線案内
はやとの風といさぶろう・しんぺいの並び 吉松駅 キハ147 はやとの風

鹿児島中央は新幹線開業前まで西鹿児島と呼ばれていた駅で、新幹線が開業した今は大変な賑わいようだ。新幹線はあとから乗るとして、とりあえず、路面電車で市内散策に出かけることにする。散策なんて言ってるが、用は乗り潰しだ。(笑)。もちろん以前にも乗っているのだが、約10年前になるし、今回、新幹線乗り入れに際し、市電も線路を付替えて、本当に鹿児島中央駅前まで乗り入れるようになったので、もう1度乗ってみることにした。事業体は鹿児島市交通局。本当の市電である。まずはその鹿児島中央駅から鹿児島駅行に乗り込んだ。元とるか分からないがとりあえず、車内でスクラッチ式の1日乗車券600円を購入。1回の運賃が160円均一だから4回乗ると元が取れる計算である。夕方ということもあって市電にはかなりの乗客。鹿児島の市電は鹿児島駅前を起点に交通局前を経由して谷山まで行く1系統と途中、高見馬場で別れて鹿児島中央駅前経由で再度1系統と合流する郡元までを走る2系統の2本が存在する比較的コンパクトな市電である。鹿児島市内で一番賑わっているのは実は鹿児島中央駅前ではなく少し離れた天文館であるから、そこまでを結ぶ市電は大いに活用さ れているようだ。路面電車はご多分に漏れず、ノロノロと進み、鹿児島駅前に到着した。市電の乗り場は4面3線と路面電車にしては立派であるが、その背後のJRの駅は、ここが本家本元の鹿児島駅とは思えないほど何とも寂しい雰囲気だ。ちなみに、この鹿児島駅が戸籍上は鹿児島本線の終点でもあり、かつ日豊本線の終点でもある。鹿児島の玄関口は完全に元西鹿児島駅であった鹿児島中央駅にとられた格好だ。折り返しは、1本待って、低床式のユートラムに乗車する。なるほど、この車両だとホームからほとんど段差なしに乗り込むことができて、車椅子や、年輩者の乗降が楽そうだ。しかし、この車両、台車間のみがフロート状に低床式になっていて、台車の1段高くなった部分は運転台にあてらているのだが、ちょっとデッドスペースが大きくてもったいない感じがする。しかし日本のようなワンマン運転で後払い式の運賃収受形式では致し方なさそうだ。ヨーロッパのような信用乗車制度が浸透すれば、よいのかもしれないが、日本の風土習慣ではちょっと難しいのかもしれない。

鹿児島中央駅 鹿児島駅 ちょっと寂しい感じです。
市電 鹿児島駅前
こちらは4面3線で路面電車にしては立派です。
1000系 ユートラム 朝日通付近
ステップがなく乗り降りが楽です。 鹿児島の西郷さんは軍服を着ています。

せっかく鹿児島にいるのだから、本場で西郷さんの像くらい見て行こうと思い、朝日通で下車をする。上野の西郷さんは浴衣姿にわんこを連れた姿で、親しみやすいが、鹿児島の西郷さんは軍服を着ていて少々勇ましい。西郷さんを拝んだあとは再び市電の1系統で谷山を目指す、高見馬場で2系統と別れ、交通局経由で鹿児島の中心街を進む。鹿児島中央駅前を通らないのだが、車内はかなりの混雑である。郡元で2系統と合流、次の涙橋からは専用軌道となって進む。1系統の西側は指宿枕崎線とほぼ平行して進む。郡元は指宿枕崎線にも駅があるが少々離れている感じだ。もっとも乗り換えやすいのがその先の南鹿児島駅前。ここは本当に隣接している。ここでは相互に乗り換える客も多い。終点谷山も指宿枕崎線の駅があるが、ここもかなり離れていて乗り換えは不便だ。地元の客によると、JRの谷山駅まで延伸の構想があるとかないとか。再び谷山から折り返し、郡元で2系統に乗り換える。郡元は2系統の終点であるが折り返し専用のホームがあるわけでなく、1系統と合流した後に1系統上の本線に渡り線があってこれを使って折り返す。ホームには乗り換え用の歩道橋が設置されている。また 乗り換え客は降りる際、運賃を払ってから乗り換え券を貰う仕組みになっている。谷山方面から1系統への乗り換えは、ホームが反対側になり、歩道橋を渡らなくてはならないので、少々不便だ。郡元からの2系統はまたしても1000形のユートラム。鹿児島中央までの路線には私立の女子中高がありちょうど下校の時間にあたり、車内は大いに賑わった。さて簡単ながらに鹿児島市電のレポートをしてみたが、市内中心部を無駄なく走っているため乗車率はかなりよく、運転間隔も1系統7分間隔、2系統6分間隔で比較的本数も多いので、非常に使いやすい交通機関であるといえる。ただやはり、速度が遅いのが気になる。路面電車の電停は300M〜400Mおきにあるわけで、それに加えて、信号でも停車する。そこで、各信号に路面電車優先システムをつけて青信号の延長や、赤信号の短縮などをすると速度向上につながりさらに利便性が増すものと思われる。さて、鹿児島中央に戻ってきたところで、駅近くにある銭湯の西田温泉に行く。以前も書いたが、鹿児島中央駅から鹿児島中央郵便局の脇をまっすぐ行ったところにある。

市電谷山駅 JRとは離れています。 広告車 薩摩焼酎ですね。
郡元に進入するユートラム
センターポール化されて整然としています。
鹿児島中央駅付近。芝生軌道がとても綺麗です。

ひとっ風呂浴びでさっぱりしたところで、今回のメインの九州新幹線つばめに乗り込む。当然のことながらまだ新しいコンコースはとてもきれいだ。で、まず驚いたのが、電光掲示板。当然、行き先は「新八代」だとばかり思っていたのだが、「博多」となっている。いくら新八代で同一ホームで乗り換えができるとはいえ、この書き方はちょっと詐欺のように思える。新幹線の鹿児島中央駅は2面4線で1本ごとに各ホームに交代交代に入線するようだが、見たところ、2本が同時にホームに入っていることはなさそうである。すでに新幹線車両である800系は入線しているが、30分ヘッドの上、短い折り返し時間の間に車内清掃まですませるので、発車5分前くらいにならないと乗ることはできない。車内については、各鉄道雑誌で語り尽くされているので、ここでは多く語らないが、白を基調としており、木の椅子がとてもよく映え、全体的にとても明るい雰囲気である。フル企画新幹線で横4列という自慢の木製の座席は確かに座り心地はよく、背もたれも高いので、プライベート空間を占有できるが、この背もたれが高いために、通路上の案内のLEDがほとんど見えなくなってしまっているのは 残念である。そしていよいよ走り出すと、これも前振り通りすぐにトンネル、出たと思ったらまたトンネル。明かり区間はほとんどない。そして鹿児島中央−新八代間最速34分。というのばかりが強調されているが、34分で走破するノンストップタイプは1日1往復のみ。あとは各駅タイプ(所要47分)、川内のみ停車タイプ(所要39分)がほぼ交互に発着する。確かに34分では車内でゆっくり落ち着いてる暇はないかもしれないが、各駅タイプでは47分と小一時間あるので、少しのんびりできる。それにしても時間帯があまりよろしくないのか、6両編成の車内は気の毒なくらいガラガラだ。新幹線開業前までは在来線の7両編成の特急つばめが1時間に1本だったわけだから、フル企画新幹線で6両編成が1時間に2本というのは、ちょっと供給過多のようだ。30分に1本にして利便性を高めたいというのは理解できるので、編成を暫定開業中は4両編成にしてもよかったのかなと思った。しかし各駅タイプの47分でもやはり早いことは早い。以前はこの区間だけでも2時間以上かかっていたものが約3分の1の時間になったのだから例え部分開業にせよフル企画新幹線の効果は絶大だといえ よう。
そして、もう1つの話題になっているのが新八代での乗り換えである。新幹線初の同一ホームで乗り換えであるが、確かにこれは便利である。乗り換え時間がわずか3分というのも短すぎるのではないかという心配もあったが、自分の場合降りてから、800系の写真を撮って、さらにリレーつばめの写真を撮っても十分、時間に余裕があった。ホームが違って階段上り下りがある乗り換え時間3分はきついが、目の前にとまっているホームで乗り換えるには十分な時間で、例え、自分の乗る号車が分からなくても、とりあえず乗ってしまってから車内を移動すればいいわけである。リレーつばめは以前までつばめに使用されていた787系。その後883系ソニック、885系かもめと続く、JR九州初の水戸岡氏デザイン、プロデュースの車両だ。1992年のデビューで、当時始めてこの車両に乗ったときは本当に度肝を抜かれたが、12年を経過した今も、その斬新さはまだ衰えることはない。ただ車内がメタリックダーク調になっているので、夜に乗ると少々暗い感じがする。感覚に個人差はあると思うが、自分はあまり暗いのが好きではないのだ。新八代を発車すると、アプローチ線を下って、在来 線に合流。一見、複線のように見えるが、一方は新幹線の1435mmから在来線の1067mmをつなぐフリーゲージトレインの実験線で途中に軌間変更装置が設置されており、試験車両以外の走行はできない

つばめ64号 行先は「新八代」ではなく「博多」になっています。 800系 つばめ 新八代駅
800系座席 フル企画の車両ですが2+2でゆったりしています。 787系リレーつばめのロゴ

そういえば、なんかバタバタして夕飯を食べ損なっていたので、ちょうどワゴンサービス(JR九州では車内販売とは言わずワゴンサービスと言っている。)がきたので、放送で客室乗務員がお勧めしていた「つばめ弁当」を1000円で買い求めた。なんでも由布院の旅館と共同で開発したという弁当だそうだ。お品書きなんて立派なものもあって、懐石風の幕の内弁当だが、私的には、いまいちという感じだ。そもそもつばめが通らないのに由布院というのがよく分からない。そして由布院には海がないものだから、当然山の幸ということだが、やっぱり海の幸の方がおいしいに決まっている。せっかく有明海沿岸を通るのだから、海産物メインの弁当の方がいいように思える。その昔、787系つばめがデビューした当時もつばめ弁当があったのだが、こちらは博多からし明太子、熊本辛子蓮根、鹿児島さつま揚げなどなど、沿線の名物が、少しづつ詰め合わされてとても美味しかったが、今回の弁当は、一歩も二歩も後退と言った感じで残念である。夜なので、車窓も楽しめず、文句いいながらも弁当をむさぼっているうちに博多に到着。今回、初めての博多入りということになる。

つばめ弁当 中身は湯布院の旅館と共同開発した懐石風幕の内弁当です。
787系 リレーつばめ 博多駅 783系 ドリームにちりん 博多駅

博多からは今回のお宿になる22時50分発のドリームにちりん。先日まで、鹿児島線にもドリームつばめが走っていたが、今や九州の夜行はこのドリームにちりんだけであり、またまた夜行の衰退を目の当たりにして少々寂しい気分。車種も5両編成の783系ハイパーサルーン。以前は787系つばめ型が7両若しくは9両で運転されていたが寂しい限りだ。5両とスリム化されたにもかかわらず、ホームでこの列車を待つ人はまばら。座席の確保を心配するわが身としては一安心。783形ハイパーサルーンは好きな車両のうちの1つで、JR化後、全国を通して初めて作られた特急電車で、デッキを車両中央に設け、前と後ろをそれぞれA室、B室と2部屋に区分した活気的な車両である。デビュー時は華やかな車両だったが、そのあとを追うように787系がデビューしてやや影が薄くなり、また水戸岡氏デザインによりリニューアルされたが、そのリニューアルからも10年以上たった今では、車内もいささかくたびれて見える。また何より内装がダーク系で薄暗い印象を与えるので余計に古ぼけて見えるのだ。入線直後はガラガラであった車内も出発時間が迫るにつれ次から次へとお客が乗ってく る。いわゆるホームライナー代わりに通勤客が利用するのだ。赤間、福間、折尾、黒崎など、短距離の利用が多く車内はまたすいてきた。そして小倉に着くとほとんどの客が降りてしまった。小倉では進行方向を変える。行橋くらいまでは、新たに小倉からホームライナー代わりの利用もあるようだが、数はそんなには多くはない。いつまでも起きていても仕方ないし、座席を回転させて、4席分に寝っころがった。ここからは夢の中で記憶がないが、時刻表によるとこの列車、大分で約2時間停車して時間調整を行なう。


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