たまにはバスで... 〜新宿−甲府 1000円キャンペーン〜


いつものようにniftyの鉄道関連ニュースをチェックしたいたら、なんと新宿−甲府間の中央高速バスが2月15日〜3月15日まで約半額の1000円キャンペーンが行われるという。1000円ってまじ?めちゃめちゃ安いじゃん。東京近辺をJRやら営団やら都営なんかでちょっと乗り継いだって、すぐ1000円近くかかってしまうというのに...。とにかくこんな機会でもないと甲府なんて街をゆっくり見る機会もないし、ちょっと行ってみようと思い立つ。とは言っても、本来、鉄なもんで、高速バスなんてものに、今まで乗ったこともないし、どうやって、乗車券を買ったらいいのかも分からない。ということで、ホームページをウロウロ。行き着いたのが京王のページ。よく読むと、このページから予約ができてしまうらしい。早速予約。メールアドレスを入れて、IDさえ登録してしまえば、意外と手続きは簡単。すんなり予約完了。もちろん、登録料なんかは無料。この時点で、すでに、利便性はJR等の鉄道より上。実際、本当に片道1000円なのか心配していたのだが、最後の合計金額には往復で2000円の表示。どうやら本当らしい。出発日は3月2日の土曜。キャンペーン中 だから、もう満席かも、なんて思って、心配していたが、20日前だったこともあって、この時点ではまだ十分席があったようだ。
さて、当日は朝8時30分発の便で出発。新宿高速バスターミナルへ向かう。ってそれどこ?ってなんてことない、ヨドバシカメラのまん前である。しかし、新宿だというのに、道は狭いし、ビルの中ってわけでもないし、しょぼいバスターミナルだなあ...。けれども、土曜ということもあって、バスターミナルはかなりの混雑。それに、1000円キャンペーンの成果もあって、やはり満席状態。予約を入れておいて正解だった。チケットは切符売場で、予約番号を告げると発券してもらえる。予約番号と言っても自分の電話番号だから非常にわかりやすい。またこのときに、座席の指定を受けて、代金を支払う。本当にインターネットで予約できるもんなんだなあって感心する。
ここで簡単に新宿−甲府線の概要を紹介しよう。運行会社は山梨交通、富士急、京王の3社の共同運行で、新宿発は7時から20時30分まで、甲府発は6時30分から20時までで、日中30分間隔、一部45分間隔で所要時間は2時間10分。大人運賃は通常1950円である。ちなみにJRの特急かいじ、あずさの場合は乗車券特急券で3980円。6枚綴りのあずさ回数券だと1枚あたり2800円。だから通常運賃でも、高速バスがいかに安いかが分かる。さらに、高速バスにも4枚綴りの回数券がありこの場合だと1755円になる。値段的には高速バスの圧倒的な勝利。ただ時間となると、スーパーあずさで1時間30分前後。遅いかいじでも、1時間50分前後。バスは2時間10分だから、かなり歩が悪い。それにバスの場合は交通事情にもかなり左右されるというハンディーもある。それにしても、今回の1000円キャンペーンは安すぎる。とにかく、乗らなきゃ損。って感じだ。

山梨交通のバス
SUPER CRURZERの愛称を持つ。
その名の通り、超ハイデッカーの座席は快適そのもの。
側面のぶどうの図柄のワンポイントがいかにも山梨らしい。

さて、8時30分になり、満席のはずだが、若干空席を残し、ほぼ定刻通りに出発。それにしてもバスの運転手というのは、本当にうまいものである。ヨドバシカメラの細い路地裏をこんな大きなハイデッカーのバスで、曲がっていくのだから...。一般道を少しだけ走り、首都高4号線の初台のランプから高速にはいる。高速バスは、当然だが、高速道路の法定速度を遵守して走るので、普段、マイカーですっとばしてるバカな連中(含む私(笑))にはちょっと気だるく感じる。最初の停車は三鷹だが、上野原までは乗車のみ可。以降は下車のみ可となる。路線バスの側道に入るものの、乗車する客はない。高井戸を過ぎて、中央高速に入り、制限速度が60kmから80kmにあがる。ユーミンの歌通り、♪中央フリーウェイ 調布基地を追い越して、右に見える競馬場。左はビール工場。♪ そのまんま。(笑)。多摩川を越えて、日野のバス停で、2名の乗車があり、ここで、満席になる。頭上の多摩都市モノレールをくぐり、八王子をすぎて少しいくと、急に景色が山間部に変わる。小仏峠を越える道は、カーブ、アップダウンが激しく、中央高速でも、運転しにくい区間になる。都県境を越えて 、束の間の神奈川県に入り、相模湖を左手に眺めながら走ったかと思うと、すぐに山梨県に入る。山梨県に入ると、バス停ごとにテープでの観光案内が入るようになる。しばらく進み、中央道境川のバス停で1名の下車。甲府南ICで降りて、いくつかバス停に寄るが大抵の人は、甲府駅まで乗車する。心配した渋滞もなく、定時10時40分より数分早く無事甲府に到着。やはり、2時間10分かかるので、そんなに近いという印象はないが、1000円で着いたっていう実感はある。(笑)。さて、せっかく甲府まで来たのだから、観光でもしよう。

山梨県立美術館 文学館
文学裏の庭園 紅白の梅が見頃 珍しい黄色の蝋梅もある。

まずは、山梨県立美術館へ。バスが早く着いたおかげで、10時40分で同発のバスに乗れてしまう。この山梨県立美術館はミレーの作品を数多く所有しているので、有名で、県内はもとより、県外からも、来館者が多い。超有名作の「落ち穂拾い 夏」や「種をまく人」などもこの美術館で、本物をみることができる。絵画好きならもちろん、そうでない人も一見する価値はある。場所はバスで15分ほど揺られるだろうか。やや郊外で、非常に環境のよいところに、文学館とともに、公園風に整備された園内にある。館内はそれほど大きくはなく、まずは、山梨県出身の画家を中心に作品が展示されており、後半部分が、ミレーも所属するバルビゾン派の絵が中心的におかれている。そして、最後のコーナーがこの美術館のメインのミレーになる。一角がすべてミレーというのだから、すばらしい。美術館自体は、そんなに大きくはないので、ゆっくりみても1〜2時間ですべて見終わり、入場料も大人500円と、手軽に名画鑑賞できるスポットとして、お奨めである。

さて、このあとは、甲府駅までバスで戻り、武田信玄を奉ってある武田神社へ。バスもあるが、駅の北口からまっすぐ伸びるだらだら坂をひたすら直進して徒歩30分。散歩にはちょうどいい距離である。この神社は武田信玄が創建したわけではなく、大正時代に武田信玄の屋敷跡に建てられた比較的新しい神社であるが、社殿がとても趣深い。また境内には水琴窟があり、竹筒に耳をあてて聞くと本当にいい音色を奏でている。

参拝を終わり、次は、バスを乗り継いで、甲府市内の湯村温泉へ。最近は石和温泉に流れがちだが、ここも古くからの温泉場である。場所的にはバスには乗るものの、比較的賑やかな場所にあるのだが、やや寂れ気味。もっとも、熱海でさえ、メインの通りの大型ホテルが軒並み潰れている時代なので、別にそんな驚くことはないのかもしれない。そんな中でも、やや、奥にはいった「柳屋」という温泉旅館はちょっと気の利いた宿で、1000円で、外湯もやっている。洗い場はやや狭い感じがしなくもないが、大きめの内風呂と露天は、ヒノキの風呂と石風呂の2つあり、ゆったりと入れる。やや熱めななので、長湯をするとすぐのぼせるので、半身浴くらいで、ときどき、冷気をあびながらゆっくり入る。泉質無臭無色透明だが、源泉の温度は93℃もある。

ひとっ風呂浴びると、もう夕方間近。三度駅に戻って夕食を。甲府といえば、やはり「ほうとう」。市内に、何軒か店がある小作に入る。ここの「ほうとう」は鉄鍋ででてきて、しかもボリューム満点。でかいかぼちゃが2つ。じゃがいも2つ、さといも1つがごろんごろんと入っている。普通それだけでも、お腹いっぱいになる。

さて、のんびり周っても最終のバスまで時間は意外とあるもので、駅前の山交百貨店や駅ビルで時間をつぶす。山交とはもちろん、山梨交通。東急や西武同様の電鉄系の百貨店である。え?山交って鉄道あるの?って声が聞こえてきそうだが、その昔、甲府に山梨交通経営の市内電車が走ってたのである。もちろん、もうとっくに廃線になってるし、自分も当然、乗ったことはないんだが...


甲府駅 武田神社

8時になり、そろそろバス乗り場へ。満員のため、予約なしで来た客は、断られる。最終便のため、キャンセル待ちもできず、困った様子で、ターミナルをでていく。まだ8時。大方電車で新宿へ向かうのであろう。さて、帰りは、2号車まで出る大盛況。1号車は山梨交通、2号車は京王である。座席の指定を行きに新宿のバスターミナルで受けてきたので、座席は1号車1番。つまり、運転席のすぐ後ろの展望席。ちょっとラッキー!行きは、甲府南経由だったが、帰りは、山梨学院、石和経由のバスで勝沼ICから中央高速に乗る。しばらくは街路照明のない、暗い高速を走る。車窓も山間部を通ってるため真っ暗で何も見えない。小仏トンネルを抜けて、八王子に入ってくると、街路灯も灯りだして、賑やかに輝いている町の中を走り出す。遠くの高層ビルが序々に近づいてきたら三鷹で一人乗客を降ろした関係で、2号車に道を先に譲る。そして、ドコモビルが正面に見えてくるとまもなく新宿である。行きと同様初台でおりる。さすがに、甲府とは違い、嫌がおうにも都会をかんじざるを得ない光景の中をほどなくいくと、終点の新宿に到着し、片道1000円、往復で2000円の甲府への旅は終 わりを告げた。

終わりに
今回は、初めて、高速バスを利用したが、キャンペーンとはいえ、本当に安さには驚いた。時間はややかかるものの、この値段をやられてしまうと、あずさやかいじにも少なからず影響があるのではと思う。一方で、当のバス会社も片道1000円で儲けがでるのかも心配だ。1台に40人弱しか乗れないバスなので、満席でも40000円。そこから、高速代、ガソリン代、運転士の人件費を引くと、損益分岐点はどれくらいだろう。おそらく30人はのせないとだめだろう。ただ、この2月終わりから3月の始めは観光シーズンの狭間で利用客も少ないのが現状であり、空気を運ぶなら、1000円でも人を運んだ方が得になる。いわば、格安航空券と同じ原理である。まあ、このキャンペーン自体、主催者の思惑通り、いや、それ以上の成果で、連日満席のようだし、私のように、1000円だから利用するという需要もあるわけだから、これでよかったのかもしれない。ただ、普段、よく利用する人が、今回のキャンペーンのおかげで、満席で乗れなくなってしまったら、それはちょっとかわいそうではあるが...
これからは、バスも鉄道も飛行機も待つだけでは、客はやってこない。今回の新宿−甲府の高速バスがいい例で、需要を掘り起こすことも重要である。飛行機についても、すでに、早割、得割と格安運賃が定着している。残りは鉄道となるが、いまのところ、せいぜい、回数券の割引程度しかないのが現状である。1990年代前半をピークに各社とも、利用客が減少傾向にある。鉄道でも、このような期間限定の割引キャンペーンをやってみてはどうかと思う。JRだから、大手私鉄だからという殿様商売はもはや通用しない時代、鉄道各社にも是非、考えて貰いたい。


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