惜別 伊豆急100系


3月18日、まもなく、引退する伊豆急100系を追いかけて伊豆に出かけた。まず、切符をどうするか?ちょうど18きっぷの時期でもあるので、とりあえず、検討してみたが、5枚綴りの上、他に用途もないし、伊豆急線は別料金(当たり前ですが...)なので却下。できれば、伊豆急線内は乗り降り自由のフリータイプがいいなあって思って伊豆フリーQきっぷを検討する。往復に新幹線または踊り子の自由席が使えるが、横浜発で12190円はちょっと痛い。次に検討したのは南伊豆踊り子きっぷ。新幹線は乗れないが往復にスーパービュー踊り子号の指定席に乗れるのはかなりの魅力。しかししれでも横浜発9860円と1万円近い金額になる。そこで、他にもなにかないかなあってインターネットで訪れたのがJR東日本横浜支社のページ。ありましたよ。バッチグーの切符。「伊豆東海岸きっぷ」というしろもの。藤沢以西発に限られているが、往復乗車券と伊豆急線内が乗り放題。当然、踊り子には乗れないが、藤沢発で5490円はかなりお得。今回は日帰りだが切符は2日間有効。切符はこれに決定!
そんな感じで、切符も決まり、日曜の早朝、中央林間経由で田園都市線と小田急江ノ島線を乗り継いで藤沢へ。本当は前日の土曜日に行きたかったんだけど、天気が崩れるというので、午後から回復するであろう日曜日にずらしたのであった。かくして6時前に出発。このときはすでに、薄日も差してるまずまずの天気。1日ずらして正解だったかも。


さて日曜早朝の田園都市線下りは、10両編成が気の毒くらいにガラガラ。乗り換えた江ノ島線は4両編成だったが、こちらも結構すいている。やっぱり日曜くらいは皆、ゆっくり寝ていたいんだよね。さて、藤沢に着き、みどりの窓口で、お目当ての伊豆東海岸きっぷを買っている間に、東海道線下り熱海行きは行ってしまう。そのあと、比較的すぐに電車がくるようだが、小田原止まり。なんかついてないなあ。でも、とりあえず、来た電車に乗ろうって思って、電車の入ってくる方向を眺めていたら、なんと185系。やったー特急開放車じゃん。(藤沢7時5分発。(東京6時18分発))


 折り返し湘南ライナーになる185系 小田原駅  リゾート21EX 熱海駅

東京発7時24分発伊東行きは有名だから知っていたけど、これは、予想していなかっただけに、喜びも2重。さっそく、乗り込み、海側サイドの窓側に陣取る。まあ、乗ってみれば、中京圏や関西圏では料金不要が当たり前の転換クロスシートだが、東京ではこんなシートにだって特急料金払わないと乗せてもらえないんだよね。そう思って改めてありがたみをかみしめる。かくして40分の踊り子気分が終わり、定刻小田原へ到着。この185系は折り返し湘南ライナーになる。なるほど、その回送を旅客扱いしたわけか。小田原で、少し時間があったので、朝食に小鯵寿司を調達しておく。でもさ、駅弁って高いよね。こんなんでも900円もするんだよね。小田原からは後からくるいつも通りの113系(笑)。これが普通なんだよね。しかし、天下の東海道本線の東京口なのに主力はまだまだ113系。横須賀・総武快速線はE217系になったし、宇都宮・高崎線にもE231系が入って、115系は淘汰されつつあるのに、東海道線には未だに、そんな話がないのはJR東海との兼ね合いなのか。さて、熱海につくと、すでに、1番線に伊東線が入線している、伊豆急2100系、通称リゾート2 1。編成は第4編成のリゾート21EXと呼ばれるもの。海側に面した3人掛の方に腰を下ろす。伊東まではJR管内なのだが、リゾート21に乗ってるとなんかもう伊豆急線に入ってるような錯覚をする。おまけに、車掌が女性だったので、余計にそう感じるのかもしれない。リゾート21はご存知、伊豆急の看板列車で、普通列車でありながら、前と後は階段状の展望席、中間部分の海側は窓側に向いてる座席配置と非常に特色のあるものになっており、登場当時は鉄道ファンならずとも多いに話題になった。この人気は今でも衰えていないどころか、その後のジョイフルトレインにも影響を与えた名車である。この名車で景色を見ながら、小田原で調達した小鯵寿司を頂く。本来なら青い空、青い海なんだろうけど、残念ながら、天気の回復は遅く、外はまだ低い雲が立ち込めている。そのうち回復してくるかと思っていたが、伊豆に入っていくにつれて、霧もでてきた。列車の方はほどよく混んで、熱海を出発。しばらくは東海道線に沿って進み、来宮に到着。東海道線の線路が脇にあるにもかかわらず来宮は伊東線にしかない駅になる。伊豆多賀、網代、宇佐美と進み、伊東では3分の1程度が降りる。 ここから、伊豆急線に入り、運転士と車掌が交代する。列車はこのまま霧の中を、南伊東、川奈、城ヶ崎海岸を経て、伊豆高原へ。とりあえず、時間が早いのと車庫があるので、下車してみる。


 伊豆高原車庫 2本の100系を挟んで2本の200系が見える。  高原車庫に並んだ100系
 転線中の100系(128) 後ろのフェニックスがいかにも伊豆らしい。  200系 JR113系の改造車 この編成はまだ組成中。 

小雨交じりの中、ホームに降りると、いかにも高原らしく、霧の彼方から小鳥さえずりが聞こえる、あまりにもきれいな音色にテープではないかと疑うほど。しかし、声のする方向には本物の小鳥を見ることができ、自分の愚かな考えはすぐに否定された。さて、伊豆高原車庫では見た感じ、100系が3編成。そのうち、1編成3両が今まさに入替え中で7両編成に仕立てられるところで、都合2編成。その他113系改造の200系が2編成見えるが、よくみると、そのうち1編成は、編成になっておらず、まだデビュー前と言った感じだ。適当に写真を撮って、30分程の時間を潰し、お目当ての上りの100系を待つ。


 伊豆高原 駅名標 リゾート21をモチーフにしたきれいなデザイン  185系 すれ違い 上り踊り子102号と下り回送。 伊豆高原
 185系踊り子102号 アコモ改造車。  128 側面

そして、やってきました、ハワイアンブルーも鮮やかな100系。もしかして、100系に乗るのって初めてかもしれない。後部で写真を撮ったあとにいそいそと乗り込む。列車は7両編成。この100系。総車両数自体多くはないのにもかかわらず、いろいろなバリエーションが存在する。この辺も100系の魅力の一つなのであろう。残念ながら私は勉強不足でここで詳細の説明できないが、何枚か写真を撮っているので、そちらを参照して貰いましょう。(笑)。片開き2ドアの車内に入ると客室はデッキで仕切られていて、客室への出入口は扉の横のボタンを押して開ける自動扉になっている。とりあえず、客室内のボックスシートに腰を下ろして、戻ってみる。初めて乗る100系、やや古臭さを感じるが、なかなか快適である。このまま廃車になっていくにはやはり惜しい存在だが、30年以上車齢を考えたら仕方のないのかもしれない。


 伊豆高原に進入する100系改造車の1000系(1502)  伊豆高原に停車中の100系(122)
 100系(122)の車内 
 デッキ付近のロングシート部分は伊豆急線内に限り喫煙コーナーになる。
 伊豆高原で休む121

そして、再び、下り列車で今度は伊豆急下田まで一気に下る。先ほどの列車の2号車に腰をおろす。上りで乗った1号車の車内とはがらりと雰囲気が変わって、あずき色のロマンスシートが向かい合わせで並ぶ。ちょうど、485系初期車でリクライニング機能のない座席が向かい合わせになった感じと言えば分かってもらえるだろうか?確かに、ボックスシートより座り心地はいいし、シートの色のせいもあって、幾分、豪華な車内に見える。
さて、天気の方は、ようやく、回復に向かってきて、車内には薄日が射すようになってきた。それでも、普段は伊豆七島が見渡せる海岸沿いの車窓も、春霞で20キロほど沖合いに浮かぶ大島の島影がかすかに見えるだけだ。この時間になると、さすがに日曜日ということもあり、車内は賑やかになる。また、行き交う185系踊り子、251系S踊り子も多くなり、伊豆急線は華やかさを増す。伊豆高原で7両編成のうち後4両を切り離して車庫に入庫させ、ここから下田までは3両の短編成でいく。運よく、前方の車両に乗ってしたので、乗り換えを強いられずに済む。


 186 側面 伊豆急下田  186 車内の様子 特急列車顔負けの車内

この先は伊豆熱川、伊豆稲取でそれぞれ、乗客を温泉に落としながら列車は先週まで桜祭りが行われていた、河津桜で有名な河津に到着。さすがに、川沿いの桜はほぼ葉桜だが、一部まだ見頃の木もある。初めて河津桜をみたが、染井吉野よりやや濃いピンク、枝振り、花付きなどは、染井吉野とほとんどかわらず、非常に美しい。また河津に限らず、伊豆には沿線各地にこの河津桜が植えられていて、気候の関係か、やはり北に位置する伊東よりではまだ見頃の木が何本か車窓から確認できた。そして、列車は最後の山間部、稲梓、連台寺を過ぎる。連台寺をでると3分ほどで、終点伊豆急下田となる。この伊豆急下田到着前に、各駅停車であるにもかかわらず、車掌から、「まもなく、伊豆急下田。終点でございます。皆様、進行方向に向かって見える山が寝姿山です。寝姿山へは駅前からロープウェイでいくことができます。下田は寛永年間に黒船により開国を迫られた地であり、5月には黒船祭りが行われる異国情緒豊かな町でございます。なお、観光案内、今晩の宿泊案内は駅の観光案内所でおこなっております。どうぞお気軽にお立ち寄り下さい。」と肉声の放送がはいる。これだけのことだが観光 地にやってきた雰囲気が盛り上がる。


 126 伊豆急下田  126 側面の様子

実は今年の正月は下田で過ごしたのだが、この時、寝姿山に上ってみた。ロープウェイで数分で山頂に到着して、ちょうど天気が良かったので、下田、須崎はもとより、遠く伊豆七島まですばらしい眺めが楽しめるので、お奨めである。さらに、山頂から少し歩いたところに、伊豆急下田駅を見下ろすように、五島慶太の記念碑がたっている。五島慶太はご存知、東急の創始者であるが、この伊豆にも東伊豆を通って、下田まで鉄道をということで伊豆急線の建設に尽力したが、開通を見ることなくこの世を去ってしまった。そこで、当時の東急の社員が五島慶太に伊豆急の開通を見せるためにこれに間に合わせるべく、徹夜でこの記念碑を作ったそうである。今の伊豆の発展は、まぎれもなく、この伊豆急の開通によるものが大きいのは言うまでもなく、五島慶太はこの発展した現在の下田を寝姿山からどのような思いで眺めているのであろう。

さて、下田到着後、再び、伊東まで戻るので改札の外にでる暇もなく、写真撮影を決行。以下、参照。(笑)


 122 伊豆急下田  122 伊豆急下田

同じ列車で再び伊東に戻るが、発車すると伊豆高原乗り換え熱海行きと放送が入る。どうも伊豆高原で車両交換をするようである。他の乗客には迷惑な話なのであろうが、私的には、別の100系の編成に乗れるのでちょっとラッキー。さて、そろそろお昼ということで、下田で撮影の合間に買っておいた、金目鯛の押寿司をひろげる。なんか今日は朝から押し寿司ばっかりって感じ。(笑)きれいな包装の箱の中に、説明書きがあって、それによると、下田は金目鯛の漁獲量が日本一とのこと。こんなとこで、社会科の勉強になりました。当のお寿司ですが、金目鯛が昆布じめになっていて、なかなか美味なるものでした。ちなみに価格は840円です。そんな感じで、すっかり晴れて青さを取り戻した海岸線とおいしい駅弁とでしばらく至福の時を過ごす。


 金目鯛の押ずし  1501 伊豆高原
 1502 川奈  川奈駅

一方、列車は、3両のため、やや混雑気味で進行。伊豆高原で7両編成に車両交換するのも納得です。伊豆高原で7両編成の新たな列車になると、さすがに、車内は落ち着いた様子で進んでゆく。さらに、この15分後、伊豆高原発熱海行きの100系列車が続行する。これにも乗らねばということで、途中、川奈で一旦下車。一本落とすことにする。改札が始まって、ホームに行くと、すでに列車が入線していたが対向のリゾート21を待つため、慌てる必要はない。ふと、この100系の運転席から降りてきた運転士を見ると、なんと女性。そうです、伊豆急は日本で初めて女性の電車の運転士を誕生させた鉄道会社でもあるのです。生まれて初めて、女性の運転する電車に乗らせていただきました。もちろん、女性だからと言って、あらゆる面において男性と差は全くなく。安全そのものの運行だったことは言うまでもない。この女性運転士は伊東で下車して(自社線内なので当然だが)、10分程あとにくる下りのαリゾート21使用のリゾート踊り子号の運転業務につき、豪華特急に華を添える。降りてきたJRの男性運転士との引継ぎもきびきびとしていて見ていて気持ちがいい。そして、後方から ホームを歩いてきたのは、このリゾート踊り子号を伊東まで担当してきたJRの女性の車掌。伊豆急の女性運転士とお疲れ様ですとともに敬礼で挨拶。鉄道もこういう時代になったんだなあ。と実感してしまう。


 川奈駅を後にする121  103 川奈
 103 伊東  リゾート踊り子号 隣は女性の運転士(かっこいい!!)

さて、リゾート踊り子を見送り。上りホームには時間調整のため、さきほどの熱海行100系の7両編成がまだ停車しているので、心ゆくまで眺めながら写真を撮ることができた。伊東では、その列車の先行の100系(もともと下田から乗ってきた筋)が折り返してくるまで若干時間があったので、お決まりのみどりの窓口に行ってオリジナルのイオカード2枚を購入。相変わらず懲りないねえ(笑)。ほどなく、さきほど、川奈で別れた100系の下り伊豆急下田行きが入線。後方に連結されている1000系に乗車。この1000系は100系の更新車で全部で4両という少数派。中桟のない広い窓と転換クロスの座席で、特急形と言われても遜色のない仕様だ。現に185系踊り子の未更新車とは
同等クラスである。天気の方はといえば、ますますよくなり、日差しもかなり強く、汗ばむくらいになってきて、ブラインドを半分下ろす。そんな昼下がりの陽光の中を列車は下田へと進む。下田到着の前には先ほどと同様の観光案内が流れる。全くといっていい程、同じ事を言ってるので、大方マニュアルでもあるのであろう。


 129 伊東  125 伊東
 でた!超変り種 元ロイヤルボックス 1801 
 現在は料金不要の豪華車両!
 129を先頭に堂々の7両編成はやはり見ごたえがある。 伊東

下田では、さすがに、日曜の午後ということで、慌ただしく、スーパービュー踊り子が出入りする。特急到着とともに、大勢の客がおりてきて、折り返しの改札がはじまると、両手に土産の干物を抱えた観光客がいっせいに251系に乗り込んでゆく。さきほど、見送ったαリゾート21も側線へ転線など、伊豆急下田は賑わいを見せている。そんな脇で何食わぬ顔をして先ほど到着の折り返し熱海行き100系は、特急には乗らずに改札からこぼれてくる若干の観光客と地元の客を手持ち無沙汰に待ち受けている。この各停でもリゾート21使用の列車だったならば、もう少し観光客も乗ったのかもしれない。やはり100系ではもはや誘客はできなのであろう。しかしその替りが200系っていうのは...JR113系の改造だもんね。というより見た感じはほぼそのまんま。今まで、リゾート21といういい列車を生み出してきただけに、ちょっと残念な気がしないでもないが、伊豆急とはいえども、所詮は地方中小私鉄。土日は賑わいをみせるが、平日はこのようなわけにもいかず、休日でも、マイカー利用者の増加により乗客は安定しているとはいい難い。中古利用は仕方ないのかも。


 103 伊東  1501 伊豆急下田
 121 伊豆急下田  121 伊豆急下田

気がつくともうすでに夕方4時を回っている。彼岸に入り、4時でも、日が高いので、まだまだ時間が早いような気がしてならない。そろそろ戻らないと、遅くなるので、ご多分にもれずに、駅内の売店で土産の干物を買い求め、帰路につく。夕方、片瀬白田付近の美しい海岸線に目を凝らし、列車は熱海へと進んでゆく。熱海ではすでに、夜の帳がまもなくおりるというころに到着。接続の品川行が2分のため急ぐが、沼津からの接続待ちのため5分遅れての出発となった。小田原からは後発の快速アクティーがあるのだが、休日は215系ではなく113系なので、乗り換えずにそのまま乗車していたが、平塚で追いつかれてしまい、藤沢までは本日、初めての優等列車に乗る。通過駅は辻堂のみ。(笑)本当は横浜まで乗っていたいとこだが、切符が藤沢発着なので、藤沢からは、来た道と同じ、小田急、そして中央林間乗り換えの田園都市線を使う。結局、時間的には横浜から地下鉄に乗るのとほぼ同じ時間で到着した。


 伊豆急下田の側線に並ぶ185系踊り子とαリゾート21  251系SVOと並ぶ121 伊豆急下田
 121 伊豆急下田 131+128 連結面 連結開放をするため通り抜けは出来ない

こうして、今回の日帰り伊豆急100系を追いかける鉄は無事終了。明日は仕事。早く帰ってねなきゃ。


 128 伊豆急下田  αリゾート21 東京側先頭車は青 伊豆急下田
 αリゾート21 ロイヤルボックス  最後は100系(185)の車内 
 独立シートにカーテンそして蛍光灯カバーと、もうほとんど特急並の設備

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